「炎症」とは、からだがタメージを受けた時に、有害なものを取り除いて修復しようとする防御的な反応のことです。炎症の原因には、ケガ(捻挫・打撲等)のような物理的な要因によるものと、風邪をひいた時等の病原菌等に起因する生物的なものがあります。
炎症は、一般的に時間の経過で分類され、短期間で症状が治まるものを「急性炎症」、炎症が長期化してしまったものを「慢性炎症」と言います。
炎症の主な徴候として、発赤、熱感、腫脹、疼痛などがありますが、これらの症状を伴って炎症は沈静化へと向かいます。しかし、時に対処が追い付かず、また小さなダメージを繰り返し受けていると小さな炎症反応が持続して、慢性的な炎症状態に移行してしまう場合があり、これが「慢性炎症」です。
慢性炎症は、自覚症状が出にくく、炎症を起こした部位からじわじわと静かに周辺の細胞や組織を蝕んでいくことから「静かな殺し屋(サイレントキラー)」と呼ばれています。
喘息やアトピー性皮膚炎などのようなアレルギー疾患も長期に亘って症状が続くため、慢性炎症に分類されます。さらに最近では、生活習慣病やアルツハイマー病等の発症に慢性炎症が大きく関わっていることが明らかになってきています。
ここでは、慢性炎症(自己免疫疾患)に分類される「関節リウマチ」に対するアサイゲルマニウムの作用研究についてご紹介します。
関節リウマチは、細菌やウイルス等の外敵からからだを守る「免疫」というシステムの異常により引き起こされます。
関節リウマチが発症した関節では、滑膜が増殖し、それに免疫が反応し、自分の関節を攻撃することで、腫れたり、痛みが生じます。これにより、関節をうまく機能させることができなくなります。
最近では、関節リウマチはサイトカイン※という免疫細胞の間で情報伝達を担うタンパク質が産生される事によって引き起こされる事がわかってきました。これが、長期間大量に産生されると、炎症が長引き、症状が悪化すると靭帯や骨へも影響し、痛みを伴いながら徐々に変形してしまいます。
※炎症、免疫に関わるサイトカインの中で、IL-1、IL-6、TNF-αが炎症促進物質(炎症を進める物質)として知られています。特に、IL-6及びTNF-αは、どちらも骨を壊す破骨細胞を活性化させてしまいます。炎症促進物質が産生される期間が長引くほど、破骨細胞が活発に活動し続けるので、痛みや変形が大きくなります。
アジュバント※関節炎モデルは、ヒトの関節リウマチを反映した病態モデルとされています。
1群6匹のラットの左肢の裏にアジュバントを注射し、以下の計5群で3,14,21日後の腫れ具合(腫脹率)を比較しました。
①無処置群
②生理食塩水を経口投与した群
③アサイゲルマニウムを1日に体重1 kg当たり50 mgを経口投与した群
④アサイゲルマニウムを1日に体重1 kg当たり100 mgを経口投与した群
⑤抗炎症剤のインドメタシンを1日に体重1 kg当たり0.1 mgを投与した群
アサイゲルマニウムを投与した群は生理食塩水を投与した群と比較して、急性炎症のみならず、アジュバントを注射してから14日及び21日後の慢性炎症(慢性関節炎)に対して顕著な効果があることがわかりました。
アジュバント注射後25日目の肢の骨を軟X線写真で各群の肢の骨を観察したところ、生理食塩水を投与した群では骨の破壊が進んでいるように見えるのに対し、アサイゲルマニウム投与群は骨の病変も抑制され、対照群に近い状態を維持しています。
※アジュバント:細胞の免疫反応を高める効果を持つ、非特異的免疫賦活剤(抗原性補強剤)です。
関節リウマチの患者17名にアサイゲルマニウムを1日1500 mg、6ヶ月間飲用していただき、患者へのヒアリングと、医師がその病態について判定しました。
1~2年前の同季節より確かに良くなっていると判断された方(有効)が9名、疼痛のある関節数や朝のこわばり、生活の活動性が改善した方(改善)が6名で、82.4%の患者に効果が見られました。
アサイゲルマニウムを飲用した患者17名のうち15名にインターフェロン(IFN)※1の産生増強が認められました。インターフェロンには免疫調節機能がありますが、関節リウマチの患者では産生能の低下が示されている物質です。また、その他の指標※2においても、改善傾向が見られました。
最新の研究では、アサイゲルマニウムで増強されたIFNは、炎症反応を悪化させるTNF-αやIL-1, IL-6といった炎症促進物質の産生を抑制する効果があることが報告されています。それに加えIFNは骨の破壊する破骨細胞を抑制する働きもあります。それが疼痛や関節変形の抑制に繋がっていると考えられます。
※1 これまで行われた研究では、アサイゲルマニウムが誘起するインターフェロンはγ型であり、ここで産生能が誘起されているインターフェロンはγ型と推測されます。
※2 CRP:C反応性蛋白と呼ばれ、体内で炎症が起きているときに血液中で上昇するタンパク質のことです。炎症が起きている場合、この数値は上昇します。
ラットの関節リウマチモデルにアサイゲルマニウムを投与することで、有意に腫れを抑える作用があることがわかり、肢の骨の病変も抑えることが認められました。またヒトの試験では、アサイゲルマニウムを飲むことで、8割以上の患者さんで症状が改善されたと判定されました。さらに免疫系を調節するインターフェロンの産生増強も認められ、関節リウマチに対して一定の効果があることがわかりました。
アサイゲルマニウムの炎症に対する作用は、今回ご紹介した慢性炎症以外にも、マウスやラットでの急性、亜急性炎症のモデルによる試験でも有効であることが報告されています。