2026年3月26日(木)〜29日(日)に開催された「日本薬学会第146年会(大阪)」において、アサイゲルマニウムが水に溶けた状態のTHGPに関する研究成果をポスター発表しました。
本研究では、THGPがパーキンソン病治療で広く用いられるL-DOPA(※1)を分解から守る可能性が示されました。
※本研究は非臨床の検討です。ヒトでの有効性や安全性を直接示すものではありません。
発表情報
- 学会名:日本薬学会第146年会(大阪)
- 会期:2026年3月26日(木)〜29日(日)
- 会場:関西大学 千里山キャンパス
- 発表形式:ポスター発表
- 演題:有機ゲルマニウム化合物 3-(trihydroxygermyl)propanoic acid(THGP)のL-DOPA分解抑制を介したパーキンソン病治療の補助剤としての可能性
- 発表者:〇安積 遵哉、柴田 峻也、武田 知也、島田 康弘、麻生 久、中村 宜司
1.研究のポイント
- THGPは、L-DOPAを分解する主な酵素AADC(※2)とCOMT(※3)の双方に対して、濃度依存的な阻害作用を示しました。さらにL-DOPAの自然分解も抑制しました。
- THGPは、腸の環境を模した試験系でも、L-DOPA代謝を濃度依存的に抑制しました。
- ラットおよびサル由来のin vitro血液脳関門(BBB)モデル(※4)では、THGPはL-DOPAの透過を妨げませんでした。これは、THGPとの併用でも、L-DOPAが脳へしっかりと到達する可能性を示しています。
2.研究の概要
パーキンソン病の治療では、L-DOPA(レボドパ)が標準的な治療薬として広く用いられています。しかし、L-DOPAは腸管や血中で、代謝酵素(AADCやCOMT)によりドーパミンや3-OMDに分解されやすく、十分な量が脳へ届きにくいことが課題です。そのため、実際の臨床現場ではこれらの酵素の阻害薬との併用が推奨されています。

THGPは、隣り合う2つの水酸基(OH基)を持つ構造(vicinal/cis-diol構造)を有する物質と錯体を形成(緩やかに結合)することが知られています。L-DOPAも同様の構造を持つため、THGPがL-DOPAと相互作用し、分解を受けにくくする可能性が考えられました。

今回、この仮説を酵素試験、細胞試験、in vitro BBBモデル試験の3つの実験で検証しました。
3.結果
実験①: L-DOPA分解に対するTHGPの抑制効果
この実験では、THGPによるL-DOPA代謝酵素(AADC・COMT)の分解抑制効果について評価しました。
結果は以下の通り、THGPは濃度依存的にAADC、COMTの双方によるL-DOPA分解を抑制し、分解産物であるドーパミンや3-OMDになる量が減少しました。

また、L-DOPAは自然に分解されてしまうことも課題点ですが、THGPは濃度依存的にL-DOPAの自然分解も抑制することを確認しました。

実験②: 細胞試験におけるTHGPのL-DOPA分解阻害効果に関する検討
ヒトの大腸がん由来の細胞株であるCaco-2細胞(※5)を使い、酵素試験同様にTHGPが、L-DOPAの代謝を阻害するかどうかを調べました。
その結果、THGPは細胞毒性を示さず、また酵素試験同様にL-DOPAの代謝を阻害することが確認されました。

実験③: in vitro 血液脳関門(BBB)モデルにおける、L-DOPAのBBB透過率の検討
ラット・サル由来のin vitro血液BBBモデルを用いて、L-DOPAのBBB透過率に、THGPが影響を与えるかどうかを調べました。
その結果、ラット及びサル由来のBBBモデルにおいて、THGPはL-DOPAのBBB通過を阻害しないことが確認できました。
つまり、アサイゲルマニウムがL-DOPAの代謝を抑制し、また、L-DOPAの脳関門通過を邪魔することもないため、脳へ届きやすくする可能性を示唆しています。
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4.本研究の意義と今後の展望
今回の結果から、アサイゲルマニウム(THGP)がL-DOPAを「脳へ届く前に失われにくくする」方向に働く可能性を示すことができました。既存のパーキンソン病治療では、L-DOPAの分解を抑えるためにAADC阻害薬やCOMT阻害薬が併用されますが、アサイゲルマニウムはL-DOPAそのものを保護するという観点から新しい補助アプローチになり得ると考えています。
一方で、本研究は非臨床の段階であり、動物試験や臨床研究を経て初めて、実際の有用性や適切な用量、安全性が判断できます。今後は、より生体に近い条件での検証を進めることで、L-DOPA関連製品や新たな補助療法の研究開発に向けた有用な基礎データとなることが期待されます。
5.用語メモ
- THGP:3-(trihydroxygermyl)propanoic acidの略称です。水に溶けた状態のアサイゲルマニウムの略称です。
- ※1 L-DOPA:レボドパのことです。パーキンソン病治療で広く用いられる成分で、脳内でドーパミンに変わることで働きます。
- ※2 AADC:芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素です。L-DOPAをドーパミンへ変える酵素を指します。
- ※3 COMT:catechol-O-methyltransferaseの略称です。L-DOPAなどを別の代謝物へ変える酵素です。
- ※4 血液脳関門(Blood-Brain Barrier; BBB):血液中の物質が脳へ入る際の関所のような仕組みです。薬が直接脳で働くには、この関門を通過できるかが重要です。L-DOPAは通過できますが、分解産物であるドーパミンは、BBBを通過することができません。
- ※5 Caco-2細胞:ヒト大腸がん由来の細胞株で、腸管上皮に近い性質を持つため、吸収や代謝の評価によく使われます。
