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学術誌に論文掲載|アサイゲルマニウムとLPSの併用で、短期間でのマクロファージのM1分化と抗腫瘍活性を促進

2025年8月1日に、当社の研究成果が学術誌『Anticancer Research』に掲載されました。
アサイゲルマニウムと低濃度のリポ多糖(LPS)(注1) を組み合わせると、培養細胞においてマクロファージ(白血球の一種)がM1型(注2)に傾きやすくなり、異物を貪食どんしょくする働きが高まる可能性が示されました。
さらに、アサイゲルマニウムもしくはLPS単独の添加では約10日かかる当該変化に対して、併用では4日間で到達するという「時間の短縮」も示唆されました。

  • 掲載誌:ANTICANCER RESEARCH
  • 論文URL(DOI)https://doi.org/10.21873/anticanres.17704
  • タイトルCombination of 3-(Trihydroxygermyl)propanoic Acid (THGP) and Lipopolysaccharide Promotes Macrophage Differentiation to M1, and Antitumor Activity
    (3-(Trihydroxygermyl)propanoic Acid(THGP(注3))とリポ多糖の組み合わせは、マクロファージのM1型への分化を促進し、抗腫瘍活性を高める)
  • 著者:JUNYA AZUMI, TOMOYA TAKEDA, YASUHIRO SHIMADA, HISASHI ASO, HIROYUKI INAGAWA, TAKASHI NAKAMURA

1.研究内容(概要)

  • 白血球の一種であるマクロファージは、がん治療の分野で注目されている免疫細胞です。マクロファージは、主に、炎症促進性のM1型と、抗炎症性のM2型に分類されます。前者のM1型が、抗腫瘍効果を発揮します。
  • 本研究は、アサイゲルマニウムが水に溶けた状態の化合物(THGP)と、低濃度のリポ多糖(LPS)の併用により、マクロファージ様細胞のM1型への分化が進み、抗腫瘍活性が高まるという相乗効果を確認しました。
  • さらに、THGPとLPSの併用により、効果発現までの時間短縮が示唆されました。THGPとLPSの各単独では10日で到達する抗腫瘍活性の状態に、併用では4日目で到達しました。
  • なお先行研究により、THGP はNF-κBを介した細胞内シグナルに作用し、LPS はTLR4を介した細胞表面シグナルに作用することが確認されています。両者のシグナルが異なるため、組み合わせによる相乗効果が想定されます。

2.方法

1) 形態変化の観察
RAW264.7細胞(注4)(マクロファージ様細胞)に、THGP(500 µM)、LPS※(1 ng/mL)、「THGPとLPSの両成分」を添加し、4 日間培養して形態の変化を観察。
Pantoea agglomerans由来

2) M1型分化の検討
M1マーカーであるCD80、CD86の遺伝子・タンパク質の発現をqPCR、ウェスタンブロット、免疫蛍光染色にて評価。

3) マクロファージから分泌されるサイトカインの検討
M1型が分泌するIL‑1β、IL‑6(サイトカイン)の遺伝子発現をqPCRにて評価。

4) 機能評価
① 異物貪食能:刺激したマクロファージによるFITCビーズ取り込み量の変化を評価。
② 抗腫瘍効果:B16‑F10 メラノーマ(がん細胞)に対する細胞傷害活性を、ルシフェラーゼアッセイにより評価。

5) 10日間刺激による総合評価
1)と同条件で10 日間培養し、1)-4)について評価。

3.結果

1) 形態変化の観察(図1)

  • THGP単独:マクロファージの樹状突起が長くなりました。
  • LPS単独:付着性のあるアメーバ様形態の割合が高くなりました。
  • 併用各単独時の特徴が併存しており、1日目・4日目の段階でM1型への分化を示す顕著な形態変化が確認されました。

2) M1型分化の検討(図2)

  • 4日間の併用:マクロファージのCD80とCD86遺伝子発現量が、各単独の場合よりも有意に高くなりました。1日目に対して、同発現量が4-5倍に上昇したことも確認しました。

3) マクロファージから分泌されるサイトカインの検討(図 3)

  • 単独:THGP・LPSの両者とも、単独でM1型マクロファージが分泌するIL‑1β、IL‑6の遺伝子発現量が有意に上昇しました。
  • 併用IL‑1β、IL‑6の遺伝子発現量が、単独添加よりもさらに上昇しました。さらに、1日目より4日目の方が、当該サイトカインの量が増強されました。

4) 機能評価

  • 異物貪食能(図4):LPS単独で上昇し、併用だとさらに増強されました。
  • 抗腫瘍効果(図5):4日間の併用で、“don’t‑eat‑me(私を食べないで)”シグナルであるSIRP‑αの発現は併用群で有意に低下(図5-A)しました。B16-F10メラノーマ(がん細胞)に対する細胞傷害活性も顕著に増強されました(図. 5B)。各単独添加時には、抗腫瘍効果は見られませんでした

5) 10日刺激による総合評価(図6)

  • 単独(THGP、LPS)の形態変化:併用時と同等程度に、各単独での形態(樹状突起長、アメーバ様形態)が変化しました。
  • 単独の異物貪食能、抗腫瘍活性:併用時と同等程度に到達しました。

4.まとめ

  • THGPと低濃度LPSは、各単独の添加でも、10日間の刺激でマクロファージをM1型に分化させ、異物貪食やがん細胞への攻撃活性を維持・増強させました。
  • さらに、両者の併用により、当該変化が短期間(4日)で確認されました。
  • 両者の作⽤点の違い(THGP:細胞内、LPS:細胞表面)による相乗効果は、免疫療法の新規の治療戦略や予防的サポートの新たなアプローチになり得ます。

※本研究はin vitro試験であり、ヒトでの有効性・安全性については、今後さらなる検証が必要です。

5.本要約における単語の説明

  • (注1)LPS
    細菌(グラム陰性菌)外膜のリポ多糖。主にTLR4受容体を介してシグナル伝達を起こし、濃度依存的に反応の強さが変わります。
  • (注2)M1マクロファージ
    マクロファージの極性(状態)の一つ。炎症性サイトカイン(例:IL-1β、IL-6)を産生する“攻めのモード”であり、表面マーカーのCD80・CD86が高まります。
    ※対になるM2マクロファージは組織修復にかかわる“おだやか(抗炎症)モード”です。がん環境下では転移促進に関与してしまいます。
  • (注3)THGP
    3-(Trihydroxygermyl)propanoic acid(3-トリヒドロキシゲルミル・プロピオン酸)の略。浅井ゲルマニウム研究所の「アサイゲルマニウム(有機ゲルマニウム)」が水に溶解した状態の分子です。
  • (注4)RAW264.7
    マウス由来のマクロファージ様細胞株。試験の再現性が高く取り扱いが容易なため、免疫学や薬効評価で標準的に用いられます。

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