本研究では、THGPを、ヒト由来の培養細胞に作用させました。その結果、免疫細胞の一種であるマクロファージ様細胞に、異物を取り込む力が高まるなど「M1様」の性質への変化が見られました。M1様マクロファージとがん細胞との共培養では、細胞株によって反応に違いがあり、THGPを事前に培地に添加しておくことによって一部のがん細胞株に対して抗腫瘍効果が高まりました。
※本研究は、培養したヒト由来細胞を用いた基礎研究です。ヒトにおけるがんの予防・治療効果、安全性を示すものではありません。
学会発表情報
- 発表形式:ポスター発表
- 会期:2026年9月24日(木)〜26日(土)
- 会場:国立京都国際会館(京都府京都市)
- 演題(邦題):THGP stimulation promotes M1 macrophage differentiation and antitumor activity via SIRP-alpha/CD47 axis in THP-1 cells
(THGPはM1マクロファージへの分化を促し、SIRP-α/CD47 axisを介して抗腫瘍効果を増強する) - 発表者:Junya Azumi, Tomoya Takeda, Yasuhiro Shimada, Hisashi Aso, Takashi Nakamura
1.今回の研究で調べたこと
マクロファージ(注1)は、体の中で異物や不要になった細胞を取り込む働きをもつ免疫細胞です。状況に応じて多様な性質を示しますが、本研究では、特にがん細胞への攻撃性が高い「M1様マクロファージ(注2)」の性質に注目しました。
研究では、ヒトの単球(注3)に似た性質をもつ培養細胞「THP-1細胞」を使いました。まず、THP-1細胞を、THGPを加えた培地で10日間培養しました(以下、この操作を「THGP前処理」といいます)。その後、薬剤を使ってマクロファージ様細胞へ変化させ、細胞の形やM1様の特徴、がん細胞と一緒に培養したときの反応を調べました。
2.M1様の性質を示す変化が見られた
THGP前処理をした細胞では、M1マクロファージで特徴的な「枝分かれしたような形の細胞(樹状形態の細胞)」が増えました。
細胞表面に現れるCD86というタンパク質は1.7倍、細胞内の情報伝達に関わるNF-κB(注4)が核内で確認された細胞は2.3倍に増えました。
また、細胞が異物を取り込む力(貪食能)は3.7倍になりました。

これらは、THGP前処理をしたTHP-1細胞が、M1マクロファージに近い特徴を示したことを表します。
3.一部のがん細胞で、アサイゲルマニウムにより抗腫瘍効果が高まる
マクロファージ様の細胞と8種類のがん細胞株を一緒に培養したところ、THGP前処理をしていないマクロファージ様の細胞でも、5種類の細胞株では、がん細胞がどの程度残っているかを示す測定値(以下、「生存指標」といいます)が低下しました。
その後、THGP前処理をしたマクロファージ様の細胞を用いると、5種類のうち4種類で、がん細胞の生存指標がさらに低下しました。
つまりこれら4種類のがん細胞に対しては、THGP前処理をすることで、マクロファージ様細胞の抗腫瘍効果が向上したと考えられます。
| 用いたマクロファージ様細胞 | 共培養したがん細胞株の種類 | 観察された反応 |
|---|---|---|
| THGP前処理なし | 8種類 | 5種類のがん細胞で生存指標が低下 |
| THGP前処理あり | 5種類 (THGP前処理なしのマクロファージ様細胞との共培養で生存指標が低下したもの) | 4種類で生存指標がさらに低下した |
4.「私を食べないで!」という合図へ、アサイゲルマニウムが影響する
マクロファージには、体内の異物や不要な細胞を見つけて取り込む働きがあります。しかし、がん細胞の中には、マクロファージから逃れるための仕組みをもつものがあります。
その一つが、がん細胞の表面にあるタンパク質「CD47」です。CD47は、マクロファージに「私を食べないで」と伝える、いわば「止まれ」の合図です。マクロファージは、表面にある「SIRP-α」という部分で、この合図を受け取ります。
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今回の実験において、以下の結果が得られました。
- CD47をつくる遺伝子がよく働いているがん細胞ほど、THGP前処理をしたマクロファージ様細胞と一緒に培養しても、生存指標が高くなる傾向が見られた
- CD47の働きを遮ると、がん細胞の生存指標が低くなった
- THGP前処理をしたマクロファージ様細胞では、「私を食べないで!」という信号を受けるタンパク質SIRP-αの量が低下した
これらの結果から、THGPは、CD47とSIRP-αによるがん細胞がマクロファージから逃れる仕組みを減弱させることで、抗腫瘍効果を高める可能性が考えられました。
5.今回の成果
本研究では、単球様細胞の段階でアサイゲルマニウムが水に溶けた状態であるTHGPを作用させると、その後にマクロファージ様の細胞へ変化した際、M1様の性質と貪食能が高まることが示されました。さらに、がん細胞との共培養で、細胞株によっては生存指標を低下させる働きが強まることが分かりました。
用語の補足
- THGP
水に溶けた状態のアサイゲルマニウム「3-(トリヒドロキシゲルミル)プロパン酸」の英語名の略称です。 - (注1)マクロファージ
異物や不要な細胞を取り込む免疫細胞です。周囲の状況に応じ、さまざまな性質を示します - (注2)M1様マクロファージ
炎症を促し、がん細胞を貪食する(食べて排除する)働きの高いマクロファージです。
本研究では、培養細胞の実験で見られた特徴が、M1に近いことから、「M1様」と表しています。 - (注3)単球
血液中を巡り、必要に応じてマクロファージなどに変化する免疫細胞です。 - (注4)NF-κB(エヌエフ・カッパ・ビー)
細胞の中にあるタンパク質で、免疫や炎症に関わる遺伝子の働きを調節する「スイッチ役」です。活性化すると細胞の核へ移動し、さまざまな遺伝子に働きかけます。本研究では、マクロファージ様細胞がM1様の性質を示しているかを調べる指標の一つとして測定しました。
